ソットボーチェ～あなたの声で～

「あ、石川さん…」
「んー？何かあったかい？」
「あのっ…。ただ一度会っただけの人に、連絡先を聞いたら、引いてしまうでしょうか…」

仕事の教え方も丁寧で、優しい石川さんだから、きっとこういうことも優しく相談にのってくれると思った。

「んっ？萌花ちゃん、好きな人できたの？」
「えっ、いや、あの…」

“好きな人”と聞かれれば、間違いなく“違う”。

けれど、“気になるか”と聞かれれば、答えは“イエス”だ。

答えられなかったわたしに、石川さんはクスッと笑った。

「そうだねぇ、引くことはないと思うけどなぁ。それに、萌花ちゃんみたいな可愛い子に連絡先を聞かれたら、どんなオトコだって嬉しいに決まってる」
「いやっ…。わたし、可愛くなんかない…」
「また、そうやって自分を卑下して。萌花ちゃんは、とっても可愛いよ」

あー、石川さんみたいな人に出会っていたら、よかったのになぁ…。