社内恋愛のススメ



頭に思い浮かんだのは、裸で抱き合う2人の姿。



私と長友くん。

生まれたままの姿になって、そっと見つめ合うシーン。


甘い言葉。

甘い雰囲気。



(う、わ………っ、無理!)


いろんな意味で、無理だ。


恥ずかしい。

恥ずかし過ぎて、頭がおかしくなってしまいそう。



あの、長友くんと。

いつもデスクを並べて仕事をしている長友くんと、抱き合って。

普段なら絶対言わない様なことを、囁き合って。


想像しただけで、顔から火が出る。

顔だけで、ヤカンの水を沸騰させてしまいそう。


私は慌てて、長友くんに問い質した。



「ま、まさか………おかしなこととか、ないよね?何もないよね!?」


私がそう聞いた瞬間、長友くんの目がキラリと光る。

その目に、嫌味な色合いが混ざった。



「なぁ、有沢。おかしなことって、何?」


長友くんがそう言いながら、私に向かって手を伸ばす。

長友くんの大きな手が、スッと私の頬に触れる。


触れただけで、また1つ、鼓動が速くなるのが分かった。






ドクン。


え?

まただ。


どうして。



ドクン、ドクン。


暴れ回る心臓が、体までギュッと締め付ける。



何だか、苦しい。

苦しいのに、もっともっとと心がねだってる。


おかしいよ。

おかしい。



ドキドキする。


長友くんなのに。

いつも隣でバカ騒ぎしてる、長友くん相手なのに。



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