社内恋愛のススメ



爽やかな朝。

だけど、やる気は起きない。


寝起きの体は怠いと、まだ布団の中にいたいと訴えている。


月曜日にやる気満々の人なんて、この世界に存在しているのだろうか?



「よいしょっと!」


面倒臭い。

だけど、頑張らなくちゃ。


仕事は、仕事。

プライベートは、プライベート。


社会人6年目。

これでも、お給料をもらって生活している身だ。



やるべきことはやる。

いくら私生活ではだらけていても、仕事となれば話は別だ。


仕事が始まれば、きちんとしているつもり。



「あー、メイク………面倒臭い。」


休みの日には触りもしないメイクポーチから、メイク道具を取り出す。


慣れた手付きで、仕事用のメイクを始める。



バッチリメイクは苦手。


朝なんて、時間もないし。

余裕もないから、そんなことまで気を遣いたくない。


手を抜いたメイクだ。



下地を雑に塗って、ファンデーションを適当に乗せて。

アイブロウで、眉毛をちょこっと描く。


ブラウンの地味なアイシャドウを、瞼に。

そして、その上をスッと、アイライナーで黒い線を薄く引く。


最後に、アイシャドウと似た色の使い古しの口紅を塗る。



マスカラは使わない。

使う意味がない。


だって、私は仕事に行くのだ。

会社に行くだけなら、これだけで足りている。



社会人として、必要最低限のメイク。

所要時間、5分。


これで、オッケー。



朝ご飯は食べない。

そんな時間があるなら、1分でも長く寝ていたいから。


サッとメイクを終えた私は、簡単に髪型を整え、淡いグレーのスーツを着てから、いつもの様に会社へと向かった。



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