社内恋愛のススメ
『拒絶』



永遠を誓い合った後に、他の女を抱く。

それって、どんな気分なのだろう。


理解出来ない。

理解なんて、したくない。





一瞬でも目を閉じれば、思い出すのは上条さんの顔。

力任せに私を組み敷いて、私の中に欲望の全てを吐き出して。


耳に残る、あの人の声。

私を呼ぶ、上条さんの上擦った声。



「実和、気持ちいいかい?こうしてるの、好きだっただろう?」

「や、いやあぁ………っ、止めて下さい………!」

「僕は気持ちいいよ。実和、君の中は………最高だよ。」


私の中に入り込んだ上条さんが、好き勝手に動き回る。


私の意思なんて、関係ない。

上条さんは、私のことを見ている様で見ていないのだ。



「印は、残さないとな。あの男が見て、すぐに分かるくらいに。」


無理矢理抱かれた体は、傷だらけ。


体中に残された、キスマーク。

見せ付けるかの様に。



きっと、わざとだ。

上条さんは、わざとこんな痕を残した。


私が、他の人間に抱かれてしまわない様に。

万が一、そんなことになってしまった時に、このキスマークがすぐに見つかる様に。


長友くんを意識しての行動なのだと、すぐに気付いた。



フワリと香る、あの人の匂い。


私、昔はこの匂いが大好きだった。

この匂いが近付くだけで、胸が騒いだ。



でも、今は、この匂いに拒絶反応しか起きない。


この匂いを好きだなんて、もう2度と言わない。




もっと、私に強い力があったらいいのに。

そうしたら、上条さんを突き飛ばせたかもしれない。


もっともっと、上条さんを納得させるくらいに言葉が上手ければいいのに。

そうしたら、こんなことにはならなかったのかな………。



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