クレイジーサドくん。
「なーに!私たちにも言えない場所なの!?」
けんちゃんは怒鳴るのではなくただ静かに私の部屋の入り口のドアに寄っ掛かる。
『えーっと…ね、』
言葉に詰まる。
少しばかり焦ってきた。
そもそも大学生で門限9時って…。
今は10時半。
一時間半ぐらい多目にみてほしいっ・・・・。
なんて考えて居たらこちらに目を向けていなかったけんちゃんが私のもとにスタスタ歩いて来て居た。
ああ、怒られる…!
反射的にギュッと目を瞑ってしまう。
それなのに…ただ一度頭を撫でキツく抱き締められて居た。
「無事でよかった…」
抱き締めて居る腕が微かに震えているのはきっと私が昔一度だけ誘拐されているからだろう。
そう、まだ私が小学校低学年の時に一度だけ…
懐かしいな、なんて思える程軽い事件だった。
なのにけんちゃんはすごく過保護だから…
その事から過保護になったのかな…。
『ごめんね…けんちゃん、和華ちゃん』
「もう、あんたはパウリに甘い!」
パシッと乾いた音と共に軽くけんちゃんの頭を叩く和華ちゃん。
そのままこの話しは流れたのだった。