16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~
「えぇ……ちょっと」

「確かに、ちょっと顔色悪いわね。お水入れてあげるから、座ってなさい」



立ち上がり、水道へと向かう松風先生の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、私は少し切なくなった。

こんな風に何もない生活を送り、何もないように誰にも気付かれずに死んでいくんだろう――なんて、1人を選んだのは私なのにね。

病気が見つかって仲の良かった家族はバラバラになって、バスケで高校へ行くという夢を見ることも出来なくなった私に、これ以上何を失えと言うの。



「はい、水と薬」

「……ありがとうございます」



水の入ったコップと紙袋を受け取り、私は慣れた手付きで薬を取り出す。

そんな私を、松風先生が何か言いたげに見つめていることは知っていた。





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