アウト オブ ザ ブルー

「本心って…?」




私がたずねると、彼女は目と鼻を赤くしたまま答えた。


「嫌な女って思われるかもしれませんが…、私、キーチがカナダに行く前にキーチとちゃんと別れて、こーちゃんともう一度やり直したいんです…」




彼女があまりにもはっきり言うので、少し面食らってしまった。


「都合のいい話だってことはわかってます…。さっきも、こーちゃんにそう言ったらふざけるなって言われたし…。でも先輩、私、このままカナダに行って彼と離れてしまうのは絶対嫌なんです…。一緒になれなくてもいいから、ただこーちゃんの近くにいたいんです…」




そう言う深雪ちゃんの瞳はまっすぐで、自分の気持ちを代弁してもらっているような気さえした。




好きな人と一緒になれなくてもいい。


だけど彼の近くにいたい…。




そういう気持ちは私も同じだ。




私は男の人を勝手な生き物だと思っていたけれど、深雪ちゃんの話を聞いて、女もずるい生き物なのかもしれないと思った。



けれどどんなにずるく振る舞っても、譲りたくない想いだってあるのだ。
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