始まりの予感


そういえば、まだ差し出し人を確認していなかった。


もらえただけで浮かれてたんだもん、そこまで気が回らなかった。


机の横に掛けたカバンを漁り、今朝確かに靴箱に入っていたラブレターを取り出す。


「うっわ、趣味わり。男のくせにピンクの封筒とか……どんだけ乙女だよ」


うげーという顔で、私が取り出した封筒を凝視するエイジ。


ドカッと椅子に座りながら腕を組んで、なんとも偉そうな格好。


茶髪に染めた髪がキラキラ眩しくて、耳にあるいくつものピアスにどうしても目がいってしまう。



「うるさいな。いいでしょ!それだけ想ってくれてるって事じゃん」


人の好意をそんな嫌そうな顔で見るエイジに少々腹が立ち、私はエイジの目に封筒が入らないようにとっさにそっぽを向いた。


「そんなもんで人の気持ちの大きい小さいが決まるわけねぇだろ」


まだ何か言っていたエイジと、ラブレターを覗き込もうとしてくるエマを振り切り、机の下でこそっと差し出し人を確認した。

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