秘密の2人

蒼空は掲示板を見つめ、しばらくするとどこかへ去っていった。


その姿を生徒会室に移動しようとしていた優羽が見ていた…が、声はかけずにそのまま見送った。


優羽は他の生徒の目に付くところで、万年追試組の蒼空と話する事を避けていた。

理由は、

《特進組と元特進組〔現万年追試〕の会話は格好の的になるため》

である。


優羽は自分が注目されることは気にならない。

だが、蒼空と注目されるのは嫌なのだ。

優羽は元特進組の蒼空と話すと、蒼空が落ちこぼれである事を周りに思い出させ、無駄に視線を浴びるのではないかと懸念している。


周りが『近寄り難いが、本当は優しい』と騒ぐのはまんざら間違いではない。

優羽は自覚のない気遣い屋なのだ。


しかし蒼空に対する行動に関しては、本当の思いは別のところにある。
それは優羽自身もまだ気付いていない。


〔今日は来ないな…〕


蒼空の後ろ姿を見てそう感じながら、優羽は生徒会室に向かうことにした。


この日も2人は『体調不良』『生徒会の仕事』を理由に授業を欠席した。
< 27 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop