溺れる月
お見舞いに行った母は、


「もう、今話しかけているのが誰かもわからないんですって」と言って泣いた。



 僕は、宗太に何もしてやれなかった。


そんな思いがずっと拭い切れずにいる。


自殺をした日に彼が家に来たと、


後になって母から聞いた。


顔に大きな痣が出来ていたという。



僕は、彼に会えなかった。


クラスの友達の家に行っていたのだ。


普段は、そんなことめったにないのに。


一緒にいたのは、宗太と共通の友達だった。


あの時、呼んでいたらと彼は悔やんでいた。


呼んでいたら、宗太は自分から死を選ぶなんてこと、


しなかっただろうか?



僕は、未だにそれがわからない。
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