紙ひこうき
第一章
一目惚れというやつだろう。

一時間ほど前。

閑散とした駅のホームで
僕はいつものように電車を待っていた。

何処からともなく風が吹く。
電車がホームに入ってくるのだろう。
朝の風は心地よいというが、
僕はそう感じたことは今までない。
駅のホームに吹く風はきまって強風だ。

僕は風を避けるため、柱に身を隠そうと
よろよろと体を動す。

すると突然僕の視界は遮られ、目の前が
真っ暗になる。
僕は顔に飛んできた紙を慌ててはがす。
気づくと周りには紙が散乱していた。
そのうちの何枚かを拾っていると、
後ろから肩を叩かれた。

驚いて振り向くと、両手に紙をたくさん抱えた女性が私を見つめていた。
「ありがとう」
彼女は笑顔でそう言うと、僕の手元から紙を抜き去り電車に乗りこんだ。

ドアの閉まる音で我に返った僕は、動き出す電車をぼんやりと見つめていた。
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