密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 私はキャバクラで働いている。いわゆるキャバ嬢。私にとってこれは職業。OLと変わらない職業だと言い切れる。

 ミクはお客さんを「キモイ」と平気で言うけど、そう思った事は一度もない。

 幸が薄そうな人ほど包んであげようと思う。孤独な人ほど傍にいてあげようと思う。

 私も彼氏がいないから、身体の寂しさも心の寂しさもわかるつもりでいる。


 ある日、ミクがラブホテルのベッドの上で下着もつけずに殺されていた。死因は絞殺。

 どうやら身体を売っていたらしい。別に驚く事ではない。ミクが殺されたと聞いても驚かなかった。

 冷たい?

 確かに私は死体のように冷たい心の持ち主なのかもしれない。でも身体は温かい。だからこの体温を求めてお客さんが来る。直接触れるのは手と手、太股と手くらいだけど、それでも体温は癒しになる。

 私は体温を体温で返す。手を触られたら、もう片方の手を相手の手に重ねる。




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