密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 そこに私は加われないし、積極的に会いには行けない。

 会うための理由を探すけどそれも見当たらない。


 時折、家の前に行って、ブロック塀越しに母の姿を隠れ見る。

 洗濯物を干したり、チューリップに水をやったり。

 その幸せそうな微笑み。

 赤、白、黄色。花のある暮らし。

 洗濯物の中にトランクスや男物のシャツがある暮らし。

 私と二人で暮らしていた時には見られなかった微笑みだ。


 私は今、幸せ?

 問いかけてみる。

 もっと母に甘えておけばよかった。辛い時は辛いと泣けばよかった。

 テストで百点を取った時、褒めてもらいたかった。

 一緒にお子さまランチが食べたかった。

 運動会に来て。

 授業参観に来て。

 今日、学校でこんな事があったんだよ。

 素直さを忘れず、言いたい事を言えばよかった。母のゆりかごに揺られたい……と。


 母にも寂しいなら寂しいと言ってほしかった。




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