密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 私はその答えを黒板に書くのではなく、キスで返した。

 左利きの私が持っている赤いチョークと、右利きの佐久間先生が持っている白いチョークの先端が触れている。

 目を瞑っていてもその光景が色濃く瞼の裏に浮かぶ。きっと佐久間先生の瞼の裏にも色濃く浮かんでいるはず。


 秘密という密に蜜が触れたその瞬間、教室という場所で心が繋がりひとつになった。

 もうしばらく、この教室に誰も来ませんように。私と佐久間先生はキスをしたまま二人でそう願っていた……。


 明日の成人式で私は振り袖を華やかに身に纏う事だろう。




【チョークの秘密*END】


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