密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 雑居ビルの五階にある居酒屋。駅から離れた路地裏という立地条件なのに店内は仕事帰りのサラリーマンで賑わっている。

 その生ぬるい籠った空気の中で烏龍茶を飲んでいる私と目の前に座っている君。

 君は右手で生ビールの入ったジョッキを持ち、左手でケータイをいじっている。

 ねえ、君から誘ったんでしょ。

 仕事帰りに一杯やりたいって。

 私が呑めないのも知らずに。

 しかもこの辺りで一番安い居酒屋指定で。この立地条件でも繁盛している理由はその安さにある。


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