密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~

「僕には結婚線がありません。だけど、松嶋さんとお付き合いしたい。結婚を前提として」


 廣田くんの手が私の冷えきった手を温めてくれたから、私はそこでいつものようにピアノを弾いた。

 これが私の夜の姿。


「占いレッスンのお礼にピアノレッスンしましょうか?」


「はい。よろしくお願いします」



 夜の手相占い師と夜のピアニスト。

 夜の姿を隠し持つ二人の手はこれからどう触れ合うのだろうか。


『手は一糸纏わず全てを曝け出す裸体である』


 職場とは異なる場所で心が密会すればする程、蜜は手という裸体で掬われていく……。雨粒に濡れた蜘蛛の糸のように煌めきながら。






【一糸纏わず*END】




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