密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~

 もう一度キスしてほしい。

 ドキドキするのに安心できるキスを。


 私は美人でも可愛いわけでもない。大学も高望みし過ぎて只今、浪人中。性格も平凡という言葉が似合うくらいの普通。特別優しくもない。得るものより失うものの方が多い生活をしてきた。


 だけど、好きな人にとって、たったひとりの存在になりたい。

 晴斗にとってたったひとりの女になりたい。


 私ね、晴斗の事が好き。大好きだよ。


「遥、好きだ……」


 晴斗が私の想いに答えてくれた。

 その瞬間、目蓋で感じる鮮やかな太陽の光で幼い恋が満月のような蜜となり、大人の愛というページが捲られた。


 一度捲られると、命ある限り、真っ白な雲の下でも、密色の月の下でも、昼夜を問わず愛というページは捲られ、綴られていく……。


 深くて熱い二度目のキスを交わしながら目を開けると、さっきの三毛猫が蜜色の瞳でこっちを見て啼いた。続きは雲のようなベッドの上で、と。


 ふわりふわり

 とろんとろん

 ぷるんぷるん






【真っ白な雲の下で*END】




< 301 / 304 >

この作品をシェア

pagetop