密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 この先、吐息が漏れるようなキスも官能的な愛撫も酸素が足りなくなりそうなくらい激しく体を重ね合う事も、「茜」と名前を呼ばれる事もないだろう。


 だからこそ、秘密めいたタブーが存在する。


 明日の朝、遼太郎は過去に私の高鳴る胸を愛した手で捏ねられたクロワッサンを「うまい」と言って頬張るのだ。


 元カレは過去に私の高鳴る胸を愛し蜜を絡めたその手で明日も明後日もパンを捏ねる。


 毎日パンを捏ねる。


 タブーは発酵を繰り返しながらこれからも毎朝続くのだ。

 蜜を塗ったパンのように愛を滴らせながら。





【高鳴る胸を愛した手*END】


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