花の名前
慧太君が、花火をしようと誘ってくれたのは、居候三日目のことだった。


二人で、近くのコンビニに行って、手持ち花火のセットと、お酒を買って海に行った。


けれど、まだ日が沈んでいなかったので、浜辺に座って、夜を待った。


あたしたちは、花火を両手に持ったり、振り回したりして楽しんだ。


まるで子供みたいに。


最後に線香花火をした。


あたしの花火は、大きな玉が火花を出す前に落ちてしまった。


慧太君が、不意に言った。


「そういえばあいつは、花火が異様に好きだったよね」


「うん」


あたしは、頷いた。


「今年は、二人で浴衣着て、花火大会に行こうねって言ってたんだ」


最後の花火に火を点けると、それは勢いよく燃えて、今度は大きな玉になった。


たくさんの火花が舞う。


オレンジ色の光が綺麗だった。


そして、燃え尽きて、砂の上に落ちた。


「一人の人が、いなくなっちゃうっていうのは、悲しいことだね」


彼の言葉に、あたしは、もう一度頷いた。


そして、彼は呟くように言った。


「俺も、恋人が死んだんだ」
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