なにぬねのんびり屋

「辛い時はちゃんと言いなさい。黙ってたら、悪化しちゃうかもしれないでしょ?」



そう言って俺の頭を撫でる先生は、まるで母親のような、優しさに満ちた顔をしていた。


と言っても、うちの母親にこんなことしてもらった記憶はないが。



「授業に出れないくらい頭痛いんでしょ?なら、保健室に行かないと。特別に先生が連れて行ってあげよう」



立ち上がり、俺の手を取る。


もしかしたらこの先生は、朝会ったときから俺の不調に気づいていたのかもしれない。

俺自身ですら気づいていなかった不調に。


どれだけ人の変化に敏感なんだか。



「保健室には一人で行けます。だから、先生は自分の仕事をしてください」


「生徒の健康のために奮闘するのも教師の仕事なんだけどなー」


「ちゃんと安静にしますから。…気づいてくれて、ありがとうございました」


「ふふふ いいえー!ちゃんと治すんだぞー」



笑顔で手を振る先生を見送り、俺も保健室へ足を進めた。



その後、保健室で渡された体温計に38度3分と表示されたことは、ここだけの秘密だ。



END





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