炭酸アンチヒーロー番外編
「ただいま……」

「ヒロくん!」



玄関のドアを開けたのは、やはりというか当然ながら家主のヒロくんで。

私はすぐに立ち上がって、彼のもとへ駆け寄った。



「遅かったね。大丈夫?」

「んー……」



靴を脱いだヒロくんが目の前に立った瞬間、ふわりと漂ったアルコールのにおい。

心なしか、目元もほんのり赤くて。

結構飲んだのかなぁ……なんだか少し、足元も覚束ないような……。

彼は「危ない橋は渡らない」と言って、つい先日ハタチになるまで一滴もお酒は飲まなかったから……こんなに酔ったヒロくんを見るのは、初めての経験だ。



「待ってねヒロくん、今お水……」



そう言って私が、キッチンの前に立とうとする前に。



「──まお、」



彼の熱い手のひらが、私の左手首を掴んだ。
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