裏面ワールドトリップ
振り返る勇気は無かった。



まさかワードローブの趣味にドン引きしている隙に敵の接近を許してしまうとは。


何という痛恨のミス。



自分の間抜けな不注意に呆れつつ、それでもやっぱり怖くて竦み上がる私の背中に、白い腕の主は更に体を密着させた。


吐息が耳をくすぐる。



――何?



「もう来たの?気の早い子だ」


細長い指が私の顎を軽く持ち上げ、後ろを向かせる。


冷たい笑みを含んだ黒水晶そっくりの瞳と、視線がぶつかる。



あぁ~、もうおしまいだ……

顔まで見られてしまった。
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