裏面ワールドトリップ
ローゼさんは白い塗り薬の大瓶を手に取ると、中身をハウスドルフさんの傷に丁寧に塗り込み、その上から新しい包帯をきっちりと巻いた。


「さぁ、終わったわ。


真琴さん、彼を門の所まで送って行ってくれるかしら?」


「わかりました」



ウイスキーはローゼさんに預け、私はハウスドルフさんと連れ立って外へ出た。


そう言えば昨日も、バルダクタル城へ続くこの森の小道を、彼と並んで歩いたのだった。


緑濃い木々の枝葉、その向こうに垣間見える青空、星屑のような草花――


何だかもう、遠い昔の事のようだ。
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