不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 俺は警察に、録音したテープを提出した。

でもコンパクトは……
自分のために必要だと言って、写真のみの提出とした。


『どうして早く言ってくれなかった』
そう刑事は言った。

俺はただ頭を下げた。


俺が二人を追い詰めたのだろうか?

俺が居たためにみずほが犠牲になったように、二人も死も又……

でも先生は言ってくれた。


『磐城瑞穂が居たがら、このクラスは救われたのだ』
と――。


町田百合子と千穂は自殺として処理された。


岩城みずほを自殺に見せかけて殺し、その自責の念に耐えきれず……

そう報道された。


俺が警察に連絡さえしていれば、事件は解決したのだろうか?


百合子と千穂は死なずに済んだのだろうか?


俺はただ……
みずほの仇を取りたかっただけなのだろうか?




 千穂を死に追いやってしまった俺を、寛大な両親は許してくれた。

でも腸は煮えくり返っているはずだ。

千穂は一人娘だった。

目に入れても痛くないほど溺愛した愛娘だったのだ。


俺を愛したために……
俺が愛さなかったために……
傷付き、そして命を散らした千穂。


俺が差し出した手を拒んだ時の表情が、脳裏を離れない。


何時も明るかった千穂を変えたのは、紛れもなく俺だったのだから。


手持ちのアルバムを開けてみる。

そこに写る千穂の瞳は、何時も真っ直ぐに俺に注がれていた。




 俺の傍には何時も千穂がいた……
何時も……

その気持ちに気付くことなく、みずほとの愛に溺れた俺。


間違いなく罪は俺にある。


俺はその時、はっきりと罪の意識を感じた。


でも果たして俺に何が出来たのだろうか?

俺はこれからの人生を、懺悔のために生きて行かなくてはならない。


(――でも……
俺からみずほを奪った千穂を恨むことなく、生きることなど出来るはずがない)


みずほを愛し……
千穂を恨み……

それでも千穂を愛さなかったことを悔やみ抜く。


所詮俺は弱い男だった。

みずほの恋人だと名乗る資格もない程の……


千穂に愛される資格もない程の……


俺は千穂にとっても、みずほにとっても最低な男だったようだ。




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