ストロベリーショートケーキ
「……あ」



不意に声をもらしてしまったあたしに、それまで無言でもくもくと歩いていた花井くんが、視線を向ける。

あたしは軽く笑いながら「ごめんね何でもない、」と言って、その彼の視線を押し戻した。



「(……やっぱり花井くんから、なんだかいい匂いするなぁ)」



あまくて、なんだか、……おなかがすく……。

と、そこまで考えたところで、あたしははたと思いつく。


(一応)付き合ってるふたりで、学校が終わった放課後、どこかに出かけるなんて。

これってまさに、『放課後デート』ってやつじゃないのか!?

うわあ、あたし、生まれて初めてだ……!


そしてまた、ふと気づいた。



≪……俺と、付き合え≫



そういえばあたしは3日前、花井くんからそう言われたけれど。

付き合ってほしい、ってことはつまり、彼はあたしのことがすき、ってことなんだよね……?

ちらり、となりの花井くんを横目で見上げる。

……あたしと花井くんって、今までまったく接点なかったと思うんだけど……何がきっかけで、彼はあたしのことを見てくれるようになったのだろうか。

ぽっと、思わず頬に熱が集まる。

ど、どうしよう……なんかよくわかんない感じに、ドキドキしてきた……!!


――ていうかまさか、これから行くところって……花井くんの舎弟だとかそっち系の仲間たちに、「俺の女だぜハハン」みたいなお披露目をされたりなんかするわけじゃないよね?

………。

……よし。
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