きみと泳ぐ、夏色の明日


プログラムを確認すると男子100メートル自由形の予選は10時から。紗香は他の種目も見たいだろうし、私もこんな場所に来れることなんて滅多にないからちゃんと焼きつけておきたい。


「紗香……」と呼びかけようとしたけど、なにやら山口くんと談笑中。

あれ以来ほぼ毎日連絡を取り合ってるみたいだし、なんだかいい雰囲気なのかな?


「あ!須賀だ!」

クラスメイトのひとりのそんな声に過敏に反応してしまった。ざわざわとみんなが騒がしくなって、振り返るとそこにはジャージ姿の須賀が。


須賀はこの大会で注目されている選手たちのひとり。

だれが優勝するのか、だれが新記録を出すのか。

テレビ中継やマスコミ関係者らしき人たちも会場にはいて、もしいいタイムが出れば須賀は間違いなくこの大会が終われば本物の英雄になる。

みんなから「頑張ってね」とエールをもらう中、須賀と目が合った。


「よう」

「うん」

私たちの挨拶はいつもシンプル。


「調子はどうなの?」

「ん?見てのとおりだよ」

それは万全ということなのかな。

まだ予選ははじまってないけど須賀の髪の毛はもう濡れていて、きっとウォーミングアップで練習用のプールで泳いだのかもしれない。

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