きみと泳ぐ、夏色の明日


4年前から水泳を遠ざけてる私にとって、それは知らない情報だった。

でも須賀が不機嫌な理由が少しだけ繋がった気がする。


中学校の全国大会でも今回の県大会でも須賀の順位は2位。1位じゃなきゃ意味がないと言っていた須賀が勝てなかった存在。

きっとそれが森谷圭吾なのだろうと、なんとなく察した。


そしてあっという間に放課後になり、女子たちはあれからずっとソワソワとしていた。

それとは真逆に私はせっせと帰る準備をはじめる。


「え、まさかすず見に行かないの?」

紗香が私を引き止めにきた。


「行かないよ。私興味ないし」

「なんで?行こうよ!ってか一緒に来てよ」

「………」


クラスの女子に限らず噂を聞きつけた人たちはみんな森谷圭吾がいる水泳部に向かった。

紗香もテニス部があるのにその姿を一目だけでも見たいらしい。


「ちょっとだけ。ね?」と紗香にここまで言われたら断れない。全然興味ないし早く帰りたいけど、私は紗香に腕を組まれて渋々水泳部に行くことになってしまった。


その間、森谷圭吾が水泳雑誌に載るほど有名なことやいずれ世界を狙えるぐらいの天才スイマーだということを教えられた。


……天才、か。

あんまり好きじゃない言葉だな。

だって好きなことを好きなだけやって、それで世界を目指せるぐらいの天才だなんて、あまりに世の中不公平じゃない。

その恵まれた運を少しぐらい分けてくれたらいいのに。

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