きみと泳ぐ、夏色の明日


中ではもう水泳部の人がウォーミングアップで泳ぎはじめていて、バシャバシャと水の音が響いていた。

その列に須賀もいたけど、やっぱりどこか不機嫌で淡々と50メートルの距離を泳いでいた。


「森谷くんいないね」と隣で他の女子同様に紗香もキョロキョロ。

私はどれが森谷圭吾だか知らないし、むしろ紗香はテニス部に遅れて行って怒られないかそっちのほうが心配になる。


その時、更衣室からひとりの男子が出ていてその瞬間、あれだけ騒ぐなと言われたのに歓声にも似た悲鳴が。


「森谷くんだ!どうしよう!めちゃくちゃカッコいい!」

みんな口を揃えて同じことを言っていた。


サービス精神なのかナルシストなのか分からないけど、こっちに気づいてニコッと笑う。それを見た女子はジタバタと興奮していたけど森谷圭吾って……。


――『あ、そういえば水泳部ってどこにあるか知ってる?』

あの時の人だったんだ。


たしかに他校の生徒なのに学校の敷地内をウロウロしてたからヘンだって思ってたけど。

現日本高校生記録保持者だけあって、その体つきは言うまでもなくかなり鍛えられていた。


森谷圭吾は第3コースのスタート台の上に立った。そしてそのままキレイに水の中へ。


飛び込みは頭、腰、足の先の順番で着水するのが基本だけど、まさにお手本といえるほど完璧で欠点がなくて、こんなに美しい飛び込みは見たことがないってぐらい。

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