後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
皇女様、お見合いする
 ぷりぷりとしながら、エリーシャは動きやすい格好から客人を迎えるためのドレスへと着替える。

 白いドレスの上に水色と黄色の上衣を重ねて、サファイアとダイヤモンドの首飾りをつける。髪はイリアが熱心に結い上げて、後頭部に高々と重ねられた。そこにもサファイアとダイヤモンドが散りばめられる。

「やれやれ、それじゃ戦闘開始といきましょうか」

 エリーシャはアイラを連れて、部屋を出た。

 近頃では、アイラはスカートの下に常に二本の短刀を隠している。

 毎朝の剣の稽古で右手と左手両方に短刀を構えても、腕が重くなることもなくなってきた。

 エリーシャの護衛侍女はアイラであることは、後宮内の住民たちには周知の事実ではあるが、念のためというやつだ。後宮を含めた皇宮全体が厳重に警備されているといえど、何があるかわからない。

「あー、めんどくさい」
「エリーシャ様、顔がしかめっ面になってます」
「大丈夫、お見合いの場に入るまでにはどうにかするから」

 皇女宮を出るなり、エリーシャの歩き方が変化する。伏し目がちになって、ドレスの裾が揺れることすらないほどにしずしずとした歩みになった。

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