後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
ダーシーという男
 お見合い相手との面会というのも、公式の場に含まれるのだろうか。アイラは、レヴァレンド侯爵の長男であるダーシーと皇宮の庭園にいた。

 アイラはエリーシャの物である青いドレスを身につけている。カーラの手によって以前より強化された指輪の力で、エリーシャそっくりに装っていた。

 アイラが身動きするたびに、首に三重にかけた首飾りが揺れる。サファイアと金針入りの水晶を連ねた首飾りは重たくて肩がこりそうだった。

 ――この男、大丈夫なのだろうか。

 アイラはにこにことしながら、ダーシーを見やる。覇気のない死んだような目に、血色の悪い顔色。三十という年齢よりやや若く見える顔立ちは、整っていると言えば言えるのだが、目が全てを台無しにしている。

「以前とは違う魔術を身につけておられるようですね?」

 ふいにダーシーが口を開いた。

 アイラは一瞬ぎくりとし――それから首を傾ける。

「何のことかしら?」

 エリーシャそっくりの微笑みを浮かべて。
 カーラの魔術は、以前は髪の色と目の色をエリーシャそっくりにするだけだった。
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