後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「護衛侍女?」
 耳慣れない言葉にアイラは首を傾げる。

「普段は侍女として働いてもらう。いざという時は、エリーシャ様のために剣を振るう――君の場合はもう一つ。有事の際はエリーシャ様の代理として行動してもらう。ぱっと見では似ていないというのが、君の場合はありがたいな」
「……でも、わたしが剣を使えるって言っても……」

 特に強いというわけではないのだ。町娘が習う護身術の範疇でしかない。

「それで十分だ」

 イヴェリンは笑った。

「本当ならエリーシャ様には護衛なんて必要ないんだよ――さて、甘いものでもつまんだら、エリーシャ様にお会いするとしよう」

 アイラは机に視線をやる――その時、大量につまれた菓子は、大半がゴンゾルフの胃の中に消えていた。
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