後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
夜遊び禁止、飲酒禁止
「でも、アイラをここから出しても大丈夫なの? だって、護衛はともかく影武者がいなくなるのは困るわ」

 エリーシャの言うことももっともだった。アイラはいざという時の影武者、ということで後宮に入ったのだから。実際、何度もアイラはエリーシャの影武者を勤め、重傷を負ったこともある。

「それはエリーシャ様にしばらく我慢していただくしかありませんな。夜遊び禁止、後宮の外に出るのは禁止。公務は体調不良で欠席していただきたい――ああ、当然しばらく禁酒ですぞ」

「えぇっ! 公務さぼるのはぜんぜんかまわないし、夜遊びも――まあしばらくはいいけど、禁酒は困るわ!」

 一番困るのが禁酒なのかとアイラは頭を抱え込みそうになったが、それよりも大変なことが山ほどある。

「病人ががばがば酒飲むのはおかしいでしょう。とにかく、影武者が留守にしている以上、人前に立つのはしばらく控えていただきます」

 珍しくきっぱりと父親が言ったので、アイラは思わず目を見張った。やるじゃん、親父と思ったのはほんの一瞬のこと。
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