後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
探索を終えて
 入る前には人が住んでいる気配があると思っていたのに、ユージェニーの言葉通り家の中はもぬけの空だった。

「困りましたねぇー、何か見つけないと」

 外で待っているイヴェリンとフェランのためにも何か情報を見つけださなければ。アイラは焦るけれど、ライナスは落ち着き払ったものだった。

 念のために全ての部屋を確認した後、ユージェニーが教えてくれた部屋へと足を踏み入れる。その部屋はひどく散らかっていた。

「あの女が先に荒らしたんじゃないか?」

 ぼやきながら、ライナスは部屋をひっくり返して、それでも何かないかと探し回る。

「……これが残されたのはわざとだと思うか?」
「何がですか?」

 ライナスがひらひらさせている便せんを、アイラは横からのぞき込んだ。

「セシリーとやらの行動予定だ」
「それはツイてますね!」

 はしゃぐアイラに、ライナスはあきれた様子で首を振った。

「ツイてますね! じゃないだろう。この家の元々の住人が逃げ出す時にこれを持って行かないのは不自然だし、ユージェニーは何でこれを置いていったんだ?」
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