後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 エリーシャは、肩をすくめた。

「それじゃ、セシリーと対抗する手段は何とかなったということね」

「いざって時には駆けつけてくれるはずですよ。まあ、彼女にはセシリーの様子を探るように頼んでおいたので、それが終わってからになりますがね」

「はあ?」

 エリーシャの声が裏返った。いくら何でも、ユージェニーにセシリーの様子を探るよう頼むとは無茶過ぎる。ユージェニーを信頼していいのだろうか。

「あのさ、ユージェニーに頼んだって……大丈夫なの?」

 呆然とアイラはつぶやく。

「今のところはな」
「ユージェニーがセシリー側につかないという保証は?」

 エリーシャがアイラの問いに問いを重ねる。

「ないですな、皇女様」

 けろりとして言うジェンセンに、エリーシャはあきれた表情になった。

「それで、ユージェニーにセシリーの様子を探らせるってぇ?」
「女帝の槍によって若さを取り戻す以上に魅力的な条件をセシリーが提示できるならともかくですが、その可能性はまずないでしょうしな」

 本当に大丈夫なのか、いきあたりばったりだな、くそ親父。アイラはそう思ったけれど、その場に居合わせた全員が同じ感想を持ったのは、互いに口にしなくてもわかったのだった。
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