後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「だいじょぶ、だいじょぶ。何のためにこれ持ってきてると思ってるの?」

 エリーシャは腰を叩いた。そこにはごつい剣が吊られている。皇女が持ち歩くのには、あまりも不似合いで――兵士や傭兵やらが持っている方が似つかわしい品だった。

 その歓楽街を急ぎ足に通り過ぎようとすると、高い女性の悲鳴が聞こえてくる。それが路地のうちの一本から聞こえてくることに気がついたエリーシャが走り始めた。慌ててアイラも後を追う。

 路地に飛び込むと、五、六人の男が一人の女性を地面に押さえつけている。

「女の敵!」

 剣を構えたエリーシャは迷うことなく、一番手前の男に向かっていった。

「ちょ……エリーシャ様!」

 アイラも剣を持っていれば続きたいと思ったのだけれど――いや、アイラが飛び込む隙などなかった。

「まず一匹!」

 人間の数え方は一人二人じゃなかろうか――ぼやっとアイラが見ている前でエリーシャの剣が閃く。
 女性を押しつけていた男が真っ先に地面に転がった。

「見てたあんたも同罪!」

 再び剣が閃いて、側で見ていた男のうち一人が壁に叩きつけられる。
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