後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
皇子様にも誘われました――裏ありですね!
 翌日には、父ジェンセンの研究室に置かれていた本があらかた皇女宮に運び込まれる。
 
 基本的に皇女宮の中に出入りを許される男性はゴンゾルフだけだから、大量の木箱に積み込まれた本を運ぶのは彼と、下働きに雇われている女性たちだった。
 
 二人一組で重い本を運んでいる彼女たちには気の毒だが、これも皇女の命令なのだからしかたない。それはともかくとして、皇女宮にはあきれるほどたくさんの空き部屋があった。

「ずいぶんたくさん部屋が余っているんですね」

 イリアとファナの二人に、皇女に一番近い侍女の地位を譲られてしまったアイラは、本を見ているエリーシャと一緒にいた。

 まあ、ここにある本はアイラの父の持ち物だからアイラでなければわからないというのも事実ではあるが。

「まあね。どうもおじい様、子どもを作る能力が薄かったらしくてねー」

 何でもないことのようにエリーシャが言う。アイラはぎょっとして、エリーシャを見た。

「子どもの数を見ればわかるでしょ。愛人何人も後宮に入れたってのに、結局成人した子どもって亡くなったお父様だけなんだもの」
「……そういうものでしょうか」

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