後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「君がアイラ?」

 アイラに声をかけたのは、セルヴィスだった。

「アイラ・ヨークでございます――殿下」

 アイラは、場所を間違えたのだろうかときょろきょろする。いつの間にか皇子宮の庭に入り込んでいただろうか。

「大丈夫、君は間違えてないよ。僕が皇女宮に乱入してきただけだから」

 セルヴィスは笑う。笑うと、意外なほどにエリーシャそっくりだった。

「何かご用ですか?」
「うん」

 セルヴィスは悪びれない笑顔のまま言う。アイラをまっすぐに見つめて。

「君を、誘いにきたんだ。エリーシャじゃなくて、僕の宮で仕えない?」

 アイラは眉を寄せた。

 髪色を変えれば、エリーシャとどことなく似ている日頃の容姿ならともかく、今はゴンゾルフ直伝の不細工メイクだ。アイラに興味を持っての誘いとは思えない。

 そう言えば――と、アイラは剣の稽古の時のことを思い出した。フェランもアイラに誘いをかけてきた。
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