後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
父、ジェンセンの研究
 同僚の侍女たちをアイラは見送った。夜、エリーシャの側にいるのはアイラだけだ。アイラは護衛も兼ねているし、夜中の一人酒にもつきあっている。

 側から見ていれば、アイラが一番の『お気に入り』の侍女であるわけだが、イリアもファナもそれをねたんだりはしなかった。

「エリーシャ様についていくのは大変だもの」
「それに、夜側にいたってエリーシャ様の護衛ができるわけでもないしねー」

 昼の間は彼女たちが率先してエリーシャの世話をしてくれるから、アイラは彼女たちの後についていくだけでよかった。

 そんなわけで、普通なら最後に入った侍女が一番『気に入られている』という状態であっても、皇女宮は平和であった。

 アイラの日常生活は、最初にイヴェリンから話を聞いた時に感じたほど恐ろしいものというわけではなかった。

 エリーシャの少し前か同じくらいに起床。ファナとイリアがエリーシャの身支度をしている間に自分の身支度をして、朝食に同席する。

 それからエリーシャの剣の稽古に同行して、アイラもフェランもしくはライナスに稽古をつけてもらう。

 基本的には、短刀二本を使っての稽古なのだけれど、最後に長剣も練習するので、かなりきついものだった。

< 75 / 394 >

この作品をシェア

pagetop