後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
夜の街での密会
 夕食を終えると、エリーシャはアイラを呼び寄せた。

「出かける。いつもの服を出して――あなたもついてきてちょうだい」
「かしこまりました」

 エリーシャは、アイラのためにも男物の衣服を用意してくれていた。エリーシャ自身の物と同じように地味な色合いだ。

「それじゃ、行ってくるわ。あなたたちは寝てていいから」

 以前にも通ったことのある隠し通路から、エリーシャとアイラは後宮の外に忍び出た。

「今日はどこの酒場に行くんです?」
「『陽気なアヒル亭』にするわ」

 エリーシャは慣れた足取りで歓楽街を進むと、『陽気なアヒル亭』に足を踏み入れた。そこの店は料理がおいしいので有名だ。

 エリーシャは、揚げてソースをからめた鶏と芋の盛り合わせを注文して、ビールも一緒に注文する。

 エリーシャはテーブルに頬杖をついて、周囲のテーブルの会話に耳を傾ける。この店は、上に宿屋があるから、この店には各国を回っている商人たちが多い。

「今年は綿が足りなくなりそうだ」
「となると、服地が値上がりするか?」
「ワインは、ダーレーンでいいのができそうだ」
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