君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

4.アイツの最初のバンド~Rapunzel~ -晃穂-



「晃穂、俺、尊夜と一緒にバンドすることになった」



アイツの口から、いつ来るかドキドキとしてたその話題が
私の耳に届いたのは、私たちが高校三年生の夏休み。



昂燿校から実家に帰って来てたアイツ。


私も最後のインターハイをやりきって、
無事に私自身の、役割を果たし終えた直後の話だった。




お互いの家の窓から、顔を出しあって
窓ごしに言葉を交わして、そのまま合図を送って二人、玄関へ。



「紀天とコンビニ行ってくるねー」っと
母さんに声をかけて、玄関を飛び出す。




「紀天、バンド結成おめでとう」

「バンド名は?」

「あっ、バンド名な……。
 Rapunzelって言うらしいぞ」

「言うらしいぞって、アンタのバンドでしょうが?」

「俺がバンド名決めたわけじゃねぇから」

「でもアンタが、バンドを始める日がとうとう来たんだね。

 ドラムを始めた高校1年の時は、どうしたことかと思ったけど
 なんか、尊夜君ともいい感じに、親睦深まってんじゃん」



二人、肩を並べながら近所の公園まで散歩して、
公園でブランコに座りながら、他愛のない会話を楽しむ。



「おかげさまでな……。

 昨日もさ、智早さんに誘われてほら、SHADEのLIVEよくやる
 あの店、行ってきたんだよ。

 そしたら、テーブルとか椅子とか並んでで雰囲気、LIVEの時とガラっと違うんだよ。

 本日貸切ってプレートかかってるドア、緊張して開けたら、そこにはSHADEの
 メンバー勢揃いだぜ。

 もうヤバすぎるだろ。
 んで、フリーズしてる俺の隣、尊夜は涼しい顔して会場内に溶け込みやがって」

「はいはいっ。

 アンタが完璧プリンスの尊夜君に対抗できるはずないでしょ。
 生まれも育ちも気品も違うんだから。

 負けて悔しいかったんだねー。お兄様としては……よしよし」



なんてふざける様に、頭をナデナデする私に
無言で睨みつけてくるアイツ。



「けど……私は抜け駆けして、SHADEのメンバーに会うなんて
 そんな紀天には罰が必要だよね。

 うん、決めた。
 
 紀天、フレンドキッチンのコンビニデザート、プレミアムロール宜しく」


そんなことを言いながらブランコから立ち上がる。
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