君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

*


尊夜、誘拐？


母乳を届けにいった時、
尊夜が眠る保育器は空っぽ。


看護師さんも気が付かなかったの？


尊夜、何処に消えたの？
早く、見つかりますように。




*



そう続けられた文字を最後に、
尊夜のアルバムは終わる。




その後、挟まれているのは、
何故か瑠璃垣怜皇【るりがき　れお】さんからの一枚の葉書。



瑠璃垣伊吹【るりがき　いぶき】。
瑠璃垣志穏【るりがき　しおん】。



そう綴られた赤ちゃんが二人。




その写真を見る度に、咲空良養母【かあ】さんは溜息をついていた。



養母の名前は、廣瀬葵桜秋【ひろせ　きせき】。



葵桜秋【きせき】と続けられる養母の呼び名が【さくら】とは読めないことを知ったのは、
漢字が読めるようになった小学生の頃。


だけど……母さんが、オレの誕生日やイベントの度に先に遺してくれた、
ビデオレターの中でも養母【かあ】さんのことは咲空良と呼んでいて、
そんな理由に疑問を感じながらも深く突っ込むことは出来なかった。



中学生三年の夏頃。
親父が寮生活中のオレの元へ訪ねてくる。



それがオレ自身の転機となった。


『紀天、お父さんたちの為に昂燿校へと高校から転入して貰えないか？』


親父が言った突然の言葉に正直戸惑った。
だけど親父が続けた言葉。



『瑠璃垣の子供が昂燿校に通っている。
　尊夜がいるかも知れない』




そう呟いた言葉に、オレは尊夜のアルバムに挟まれていた一枚の葉書を思い出す。
確か……そこに続けられているのは瑠璃垣伊吹と瑠璃垣志穏の名前。


真実を知るために……、
尊夜見つけるために昂燿校に転入しよう。


『養母さんに笑って欲しいから……』そう心に決めた。