君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】


その間にも、次から次へとメンバーは姿を見せて
あっという間に、全員が揃った後はスティックを打ち鳴らす音と同時に、
爆音が空間を切り裂いて演奏が始まった。


LIVEが始まった後も、オレには未知の領域でファンたちが暴れる隙間から
少しでも、ドラムの方が見えないか必死に視線で追いかける。


EIJIさんが刻むリズムを聞きながら目で見えるドラムパートの配置と、
耳で捉える音とを一致させていきながらそのリズムを体に刻み込むように
つま先では床を叩く。


一気に何曲か続いた後は、ボーカルがお客さんを煽って行く。



『今日は、全てを忘れさせてやる』

『お前らも壊れちまいな』

『ほらっ、もっと声を聞かせろ。
 声がちいせーんだよ。
 Reiが聴こえねえってよ。

 もっとお前らの力見せやがれ』

『Ryoが寂しいってよ。
 やる気ねぇなー。

 お前らの力ってその程度かよ』

『恥ずかしがってんじゃねぇよ。
 もっと、本性出せや。

 ぶつけろやぁー。
 まだ足りねぇって。

 EIJIのところまで、お前らの力、届ろやー』



メンバーと、観客たちの絡みの時間では
楽器隊が演奏する同じようなフレーズが続く中、
琢也さんがひたすら観客を煽りつづけて、
観客は琢也さんの声に答えるように
同じ行動を儀式のようにしながら、ボルテージが上がっていく。

楽器隊のメンバーも、ボーカルと観客と一緒になって
アクションをしながら、空間が一つになっていくのが伝わってくる。


最初は、ポカーンとしていた晃穂も順応能力があるのか、
今では他のファンのお客さんたちに混じって
見よう見まねで体まで動かし始めてる。


それはそれで、退屈されるよりは嬉しいんだけどな。


明らかにオレとは違った楽しみ方。



ステージはドンドン過ぎていく。



各、楽器隊と言われるメンバーのドラムソロから始まって、
ベースが増えて、ギターが増える。


全ての楽器パートが増えて、行われる即興セッション対決。



そして再び、ボーカルが登場して後半戦のLIVE。



アンコールが二回。



「Thank You」



琢也さんの声が響いてメンバーがステージに勢揃い。


ステージに次々と投げ込まれるメンバーの愛用品やら、
メンバーの飲みさしのペットボトル。

汗を抜いた後のタオル。

ピックや、スティック。


そんなプレゼントに群がるファンたち。
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