君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】


テスト勉強の合間、合間は女子力と言われるものを磨くための
智海先生の講義の時間にもなって。


そうやって迎えたデート当日。



私は慣れないメイクに戸惑い、着なれないファッションに、
長すぎる裾を何度も何度もふんずけながら
約束の時間に向かって、準備を頑張ってた。




『今から出るよ』



そうやって連絡してきた紀天のメールにドキドキ感も増す。



鏡映ったいつもと違う私を見てアイツはどうやって言うだろう。
純粋にそんな楽しみもあって。




早めに起きたはずの時間も、バタバタしている間に、
あっと言う間に時間だけは過ぎてしまって
慌てて家から飛び出すように駅に向かった。



待ち合わせにした駅前の噴水広場。



何時もはアイツが待っていそうな時間なのに、
アイツの姿はそこにはない。




仕方がないから、噴水に腰掛けて
自販機でジュースを購入して水分補給をしながら
アイツを待ち続けてた。





ったくもう、誰よ。
遅刻何てしないって昨日言いきってたの。



そんなことを思いながらも、
アイツから届いた「今から出る」って言う
メールが届いた時間を確認したくて鞄の中にあるはずの携帯を探る。



あれっ?
えっ、嘘……ないっ。ない。


どれだけ探しても携帯電話は見つからなくて
私はその場から立ちあがると駅員さんに電車の遅延情報がないかを確認した。



確認しても、そう言った情報は現時点ではない。



そうなってくると、アイツが今ここに居ない理由がわからなくて、
私はまたフラフラと、噴水に腰を下ろした。


やがて駅前の時計で、
SHADEのLIVEの開場時間が近づいていることを知る。




っもう、知らないんだから。

紀天、一人で行くんだからね。



心の中で、どれだけ叫んでみても強く思ってみても、
実際にそれが出来ないことは私が一番知ってる。


SHADEも好きだけど、
紀天と過ごせる共有の時間だから好きなだけで
一人で楽しめるところまで、まだ入り込めてない。



財布の中に折りたたまれたチケットを手に、
見つめながらも私はその噴水の前から動けないでいた。


開場時間になっても、アイツはまだ姿を見せない。


電話をかけたいと公衆電話を探してみるものの
携帯社会となった今では、
簡単に公衆電話なんて見つかるはずもなくて。


もしかしたら、もうLIVEハウスに行ったのかもと
トボトボと、その場所へと向かう。



開場時間が始まった、会場前はズラリと並んだ人が、
徐々に建物の中へと吸い込まれるように移動していた。
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