さよならの魔法
『予感』
side・ハル







会いたい。

会いたい。


だけど、会えない。



会えない。

会えない。


会いたいのに、あなたには会えないよ。




ずっと繰り返していた。

ずっとずっと、同じことばかりを考えていた。


紺野くんに会いたい。

だけど、会えなくて。


あんな形で、気持ちを知られてしまった。

最悪な形で、告白は終わってしまった。



合わす顔なんて、ない。

会える訳がない。


でもね、それでも、会いたいって思っちゃうんだ。

会いたいと思えば思うほど、会えない現実を思い知る。




心の奥で叫んでる。


大好きだよ。

会いたいよ。

君の笑顔が見たいよ、と。





紺野くんに会えないまま、1学期が終わった。


保健室に通う私が、教室で普通に授業を受ける生徒と顔を合わせることはない。

それは、私が望んでいたこと。

願っていたこと。



だって、会えないよ。

紺野くんに会える訳がない。


そうでしょう?



頭では分かっているのに、気持ちは違うんだ。



会いたくないと思いながら、心のどこかで会いたいと願っている。

紺野くんの顔が見たいと、そう願っている。


ばったり、廊下で顔を合わせることはないだろうか。

そんな偶然を、期待していたのだ。



奇跡は起こらなかった。

偶然も、私の身には起きなかった。


夏休み。


小さな山あいの町にも、夏が訪れる。

蒸し暑い夏が、再びこの町を包み込んでいた。










「ん………。」


ふと、目を覚ます。

目を覚ませば、そこにあるのは見慣れた風景。



本棚に並べられた、大好きな本。

壁には、ハンガーにかけられた夏物のセーラー服。

机の上には、やりかけの宿題の山。


目を閉じる前と同じ風景が、そこにある。




(私の部屋、だ………。)


ああ、そっか。

宿題をやりながら、寝てしまったんだ。



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