さよならの魔法



今日という日を、記念日にしよう。

私が私を捨て、そして生まれ変わる日にするんだ。


さあ、その為に魔法をかけよう。

自分自身に魔法をかけよう。






さよなら。

さよなら。


泣いていた私は消えるんだ。



さよなら。

さよなら。


何も言えない自分は、今、この瞬間からいなくなる。

新しい自分に生まれ変わるんだから。



いじめられていた過去なんて、忘れてやる。

そんな過去はいらない。


真っさらな自分に生まれ変わる。

最初から、全てをやり直すんだ。



そうすれば、この恋も消える。

きっと忘れられる。


新しい自分に生まれ変われば、この切ない想いも忘れられる………。




(さよなら、紺野くん。)


さよなら。

さよなら。


何度、この言葉を唱えれば忘れられるのだろう。

初めて好きになったあの人のことを、忘れられるのだろう。


忘れられるその日まで、私は唱え続ける。




さよなら、と。

大好きなあなたに。



(さよなら、私。)


思い返せば、私は逃げてばかりだった。


つらい恋からも、いじめからも、いつも逃げていた。

何も言えなくて、背中を向けているばかりだったんだ。



何も言えなかった私に、さよなら。

勇気のなかった私に、さよなら。




さよならの言葉が、魔法になる。

この言葉が、私を変えてくれる。


過去の自分と、決別する為の言葉。

私を変えてくれる魔法になるって、信じてるんだ。



魔法をかける為ならば、何度だって言おう。

何回でも、口にしよう。


魔法の言葉を。

私を変えてくれる、その言葉を。




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