さよならの魔法



触れた手と手が、熱を発する。

手から伝わって、全身に狂おしいほどの熱が回っていく。


体が焦げてしまいそうなほど、熱い。

触れている、ほんのわずかなその場所が熱い。




会ってしまえば、抑えられる訳がなかった。

止められる訳がなかった。


ずっと閉じ込めてきた、この気持ちを。

会えない時間を経ても、変えられなかったこの気持ちを。



言葉にならない想いが、涙となる。

涙となって、私の目から溢れ出す。


閉じ込めていた分だけ、涙は留まることなく流れ落ちていく。




好きだよ。

大好きだよ。


私、やっぱり紺野くんのことが好きだ。



「おはよー!」


初めて会った、あの日から。

初めて言葉をかけてくれた、あの日から。


私の心は、あなたに惹かれていった。

ずっとずっと、あなただけに囚われていた。




あなただけは、私をおかしな目で見ないでいてくれた。

みんなに接するのと同じ様に、私にも話しかけてくれていた。


初めて会ったばかりの私にでさえ、笑顔を向けてくれたんだ。



離れようと思った。

叶わない恋から逃げたくて、どうにもならない現実から逃げたくて、故郷を捨てた。


そんな行為に意味がないことを知ったのは、何年も後のこと。



忘れられなかった。

消せなかった。


紺野くんの存在だけは、消えてはくれなかった。



他に、大切な人がいてもいい。

私のことなんて、好きでいてくれなくてもいい。


1番になりたいだなんて、そんなおこがましいこと、思ってないよ。



だから、今だけ、この手を取ってもいいですか?

今だけでいいから、この手を握っても許してくれますか?


今だけでいいから。

ほんの一時で構わないから。





好きです。

ずっとずっと、大好きでした。


今、ここから、何かが始まる気がした。










【side・ハル 完】
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