さよならの魔法
『告白』
side・ユウキ







学校って、楽しい場所。



勉強は好きじゃないけど、学校に行けば友達に会える。

自然と笑顔になれる、そんな場所なのだ。


俺にとっては。



だけど、他の人にとってはどうなのだろう。

みんながみんな、学校という場所を気に入っているのだろうか。


そう考えるきっかけを与えてくれたのは、あの子。

同じクラスの天宮だ。



穏やかに生きていた彼女の変化が、クラスの空気を変えていく。

普通のクラスだった2年1組に、影を落とす。


そして、俺自身にも、大きな変化が訪れようとしていた。








中学2年の夏。


夏休み直前の、7月のある日。

今は、給食が終わったばかりで昼休みだ。



いつもと変わらない、淀んだ空。

灰色にくすんだ雲が、青い空を覆い隠す。


梅雨に入ってからというものの、ずっとこんな空模様ばかりが続いている。

まともに晴れた日なんて、ほとんどないと言っても過言ではない。


こうも雨が続くと、さすがの俺でも憂鬱になる。




ジメジメとした空気。

湿気を含んだ空気が、世界に充満している。


広がる湿気が、俺の天然パーマっぽい癖っ毛の髪を、更に跳ねさせていた。



暗い空は、夜になる直前の空の様だ。

くすんだ雲の色は、どこまでも黒い。


その色は、闇の色。

吸い込まれてしまいそうな闇が、そこにある。


吸い込まれてしまいそうと言うのは、大袈裟かもしれないけれど。



「あー、あっつーい………。」


ボソッと呟いた一言は、おそらくこの教室にいるみんなが思っているであろうこと。



(あー、扇風機すらないって、ほんとしんどい………。)


経費節減とか言っちゃって、先生はクーラーを付けてもくれない。


そんなことを言って、生徒が熱中症にでもなったら仕方がないだろ。

元も子もない。


付けられることのないクーラーが、教室の天井から悠然と俺達を見下ろしている。



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