さよならの魔法



つくづく、ありがたいことだなって思う。

子供の為ならば、親はそんなことは大して気にしていないのかもしれないけれど。



(ああ、そっか。今、実家に帰省中だった………。)


ぼんやりしていた頭で、そう思う。


正月休みは帰れと、散々言われてきた俺。

最初は面倒だと、嫌々帰省したはずなのに何だかんだでくつろいでる。



「分かってるって。」


口では怠そうに返事をしながら、コタツの中に潜っていた体をゆっくりと起こす。


ふと目にした、カレンダー。

1月のページにめくられた真新しいカレンダーは、10日にご丁寧に丸が付けられている。



今日は、1月8日。

いつもなら、三が日を過ぎたらとっくに帰ってる。


そんな俺が、田舎に残り続ける理由。

それが、この日にある。


1月10日。

20歳を迎えた俺の、成人式の日。








紺野 有樹【コンノ ユウキ】、20歳。


公立大学に通う、大学2年生。

そこそこの偏差値の、地元では有名な大学に行っている。


まあ、成績はそんなに良くないけれど。

多分、下から数えた方が早い。



そんな、どこにでもいる大学生である俺の晴れの日。


コタツテーブルの上には、1枚のハガキ。

何ヶ月か前に届いたハガキが、俺をこの町に留まらせている。






紺野 有樹 様



20××年1月10日


市立弥生が丘中学校

平成××年度卒業生

3年1組 同窓会を開催します。



ご都合のよろしい方は、是非参加して下さい。



差出人は、元・クラスメイト。

3年の時のクラス委員だった、西脇 友実【ニシワキ トモミ】。


アイツも、マメなヤツだ。


同窓会が予定されているのは、ちょうど成人式の日の夜。

地元を離れているヤツも多いから、この日に同窓会をセッティングすれば出席者も自ずと増えることだろう。



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