~宿命~
定道:「兄さん!ここにいて下さい!兄さんっ!」
分かっていた。
正道が血のにじむ努力をして強くなった事ぐらい。
だが、俺が言いたかった事はそんな誰にでも出来る単純な事ではない。

明隆:「正道ぃぃ!」
正道:「何だっ!」
鬼の形相で振り返った正道の頬を力一杯殴り倒した。
突然の事に怒り狂った正道は殴り返そうと急いで立ち上がろうとした。
だが、そうははさせず、スネで胴を押さえ、頭を床に押さえ付けて教えてやった。
明隆:「お前はこの一年間何を学んで来たんじゃ!俺が言いたかったのは強弱じゃねぇぞ!敵であっても人間やっ!こんな奴等でも怪我をしたら悲しむ奴がいるんだよっ!本気で戦ってもいいが、倒れた相手を攻撃するなっ!ちょっとぐらい情けをかけてやってもええやないか。殺気立つな。分かったか?」
正道:「…。」
何も答えない正道に殺気だたれた相手の気持ちを教えるべく心を鬼にして殺気立ってみせる。
正道は目が合った瞬間震えだした。
明隆:「分かったかと聞いとるんだ。」
正道:「分かった。」
声より唾(つば)を飲み込む音の方が大きかった。
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