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 「どこに行くの?」
 鈴音は訊いた。浅草を待ち合わせ場所に指定し、気づけば再び駅にいる。目的が見えてこない。券売機付近は人々でごった返していた。
「赤城だよ」
 恭一は当然のように言った。
「群馬の?」
「そう」と彼は鈴音に特急券を一枚手渡し、「全てを終わらせるんだ」と何かしらの決意を纏った声音を響かせた。それでも駅構内は混雑し、恭一の演出度は半減している。
「終わらせる?」 
 鈴音は特急券を握りしめながら訊いた。そこには、『りょうもう号 三号車』と印字されていた。
「そのことについては後で話すさ。まずは軽食を買って車内で。旅は長い」
 恭一は再度、余裕のある笑みを見せる。櫛いらずのさらっとした髪。オブジェにでもdけいそうな整った顔、歯並び。仕事帰りなのか、紺のスーツが男の色気を出す。
 鈴音にはよくわからないが、どうやら旅をしに、りょうもう号に乗り、赤城まで向かうらし。ただひとつ。
 すべてを終わらせる。
 恭一の言葉が鈴音を少なからず不安にさせた。
 なにを終わらせる?
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